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国際ウェビナーシリーズ “From Cellular Dynamics to Morphology” を開催しました

2021年2月15日 領域代表者・中島敬二(奈良先端大)

 

本領域では、2020年11月に神戸大学で国際シンポジウムを開催する予定でした。新型コロナウイルス感染症の世界的流行を踏まえ、当初は1年間の延期を決定しましたが、翌年の見通しすら立たないことから、国際ウェビナーシリーズとして、形を変えて開催することとしました。

 

https://plant-periodicity.org/announcement/329/

 

 

 

本ウェビナーシリーズは全6回から成り、各回とも海外の研究者1名と本領域の研究者1名が講演しました。近いトピックの講演をペアにすることで、特定の発生現象に焦点を絞った討論ができるように配慮しました。海外からの演者としては、動植物を問わず、細胞生物学や発生生物学で注目されている研究者を招待しました。植物発生学では、Niko Geldner博士が根の細胞の拡散バリア形成機構について、Dominique Bergman博士が葉の気孔系譜の細胞極性形成機構について、José Feijó博士がグルタミン酸受容体ファミリーによる細胞の先端成長制御について、最新のデータを交えて講演して下さいました。またDolf Weijers博士は動物と植物に共通したDIXドメインタンパク質による細胞形態の制御機構を、Miki Ebisuya博士は哺乳動物の種特異的な分節周期を決定する機構について、Hiroshi Sasaki 博士はクロマチン構造を超高解像度に可視化するChromosome paintの技術について講演して下さいました。

 

 

オンラインツールとしては世界的に利用者の多いZoom Webinarを使い、各回2時間のウェビナーを数日間隔で開催することで、なるべく多くの方が無理なく参加できるように配慮しました。時差の関係で、アメリカの講演者の回は日本では午前、ヨーロッパの講演者の回は日本では夕方の開催となりました。世界31か国から600名を超える参加登録があり、各回200名程度が参加しました。

 

研究セミナーでも、音楽や演芸のライブと同様に聴衆の反応が演者の熱気を大きく左右します。ウェビナーではどうしても聴衆の反応が演者に伝わりにくくなるため、次善の策として、領域の主要メンバーには全員顔出しでの参加をお願いしました。また講演開始前に歓談時間を設け、互いにリラックスできるようにしました。質疑はQ&Aへの入力でも受け付けましたが、「手を挙げた」視聴者を優先的にパネリストに昇格させ、互いに顔を見ながら討論できるように配慮しました。講演終了後にも歓談時間を設けて討論や親交を深めましたが、これは招待演者の方にもたいへん好評でした。終了後の視聴者アンケートでは、”Great talks. Thank you so much for organizing this seminar series.”や”Great discussion and science update. Thank you.”など、たくさんの好意的なコメントをいただきました。

 

参加者からの要望に応え、全ウェビナーの録画を、演者の許可を得て1カ月半の期間限定で視聴できるようしました。視聴回数は、多いもので190回にも達していました。録画を視て改めて気づいたのですが、海外の研究者は講演中も腕や表情を絶え間なく動かしていました。また、冒頭にタイトルスライドを出したまま、自身の興味や大きな研究背景を語っている方が多いことにも気づきました。良し悪しは別として、日本人の研究者は開始直後に次のスライドに移行して早々にイントロを始める傾向にありました。身振りを見せるにはカメラから少し離れる必要がありますが、そのためには背景が片付いている必要があります。そして背景が片付いていると話の内容が頭に入りやすいようにも感じました。また顔がカメラに近すぎるとディスプレを見る視線が下向きになるばかりか、顔が歪んで写ってしまい、良いことは何も無いように思いました。視聴者の側も、表情を大きく変えたり(秀逸なジョークにはミュートでも笑ってあげたり)、いつもより大きく頷いたりすることで、演者が気持ち良く話せる環境を作ってあげることができると思います。コロナ禍により国際的な往来や集会が制限されて間もなく1年が経ちます。オンライン会議も単なるリテラシーからスキルやマナーを磨くステージに入りつつあります。このようなタイミングで開催した本ウェビナーは、科学者コミュニティーにおけるオンライン会議の今後を考える上でも良い機会になったようです。

 

最後になりましたが、ご講演いただいた演者の皆様、座長を始めとして運営にご協力いただいた皆様、議論を盛り上げて下さった視聴者の皆様に、心よりお礼を申し上げます。