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花粉管は核がなくても胚珠に辿り着く ~世界で初めて核を持たない花粉管の作出に成功~

著者:Kazuki Motomura, Hidenori Takeuchi, Michitaka Notaguchi, Haruna Tsuchi, Atsushi Takeda, Tetsu Kinoshita, Tetsuya Higashiyama & Daisuke Maruyama (元村 一基、武内 秀憲、野田口 理孝、土 春菜、竹田 篤史、木下 哲、東山 哲也、丸山 大輔)

タイトル:Persistent directional growth capability in Arabidopsis thaliana pollen tubes after nuclear elimination from the apex

雑誌名:Nature Communications

掲載日:2021年4月22日

URL:https://doi.org/10.1038/s41467-021-22661-8

 

丸山班の丸山大輔 助教(横浜市立大学)の研究チームはモデル植物シロイヌナズナを用いて世界で初めて細胞質中に“細胞核”が存在しない花粉管を作出することに成功しました。さらにこの細胞核を除いた花粉管が、核を持つ正常な花粉管と同様に、雌しべの奥にある生殖器官の胚珠へ正確に辿り着く能力を保持していることを明らかにしました。

細胞核は高校生物の教科書の冒頭で紹介される、遺伝子の発現をつかさどる存在です。花粉管でも常に先端にある核が、花粉管の長距離に渡る伸長や正確な伸長方向制御に必要であると考えられてきました。こうした常識を覆し、細胞核からの新規の遺伝子発現を必要とせず胚珠へと方向転換して、胚珠内の卵細胞へ辿り着く能力を保持していることが示されました。

 

 

図. 細胞核を持たない花粉管も胚珠を目指す

細胞核を持たない花粉管も胚珠を目指す

 

左:野生株の場合、雌しべの切り口から伸びた花粉管は胚珠へ向かって方向を変えて進入する。
右:wit1/wit2変異体でcals3mを発現させた花粉管では、2つ精細胞と栄養核が基部側から動かず細胞壁の隔壁によって閉じ込められた状態になる。しかし花粉管は本来の伸長能力を失わず、野生株と同様胚珠に進入する。