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第2回若手の会世話人インタビュー

2021年6月10日

 

新学術領域で例年開催される若手の会。通常であれば教授が企画して合宿形式で開催されるが、今年度はコロナ禍でもありオンラインで開催されることに。そんな中「若手の会の幹事やらない?」と突然振られた若手研究者たち。心配する教授陣をよそ目に、次々と企画を立てると開催期間2か月に及ぶ壮大なイベントに・・・。世話人として大活躍した4名の若手研究者をインタビューしました。

 

編集:新学術領域研究「植物の周期と変調」広報

 

司会

池内 桃子

新潟大学・理学部理学科 准教授

切っても切っても生えてくる、植物の旺盛な再生能力を研究しています。自分が学生だった頃も若手を見守る側になった今も、若手の会は大好きです

 

 

第2回若手の会世話人

柏野 善大

東京大学・先端科学技術研究センター 助教

人間情報学分野でヒトの自在化と自在化技術に関して研究中. 最近は植物学者にとって自在化とはなんだろう、と悩んでいる

 

樋渡 琢真

基礎生物学研究所・細胞動態研究部門 特任研究員

動かない植物が様々な環境に適応するために獲得した現象に興味があります

 

松本 光梨

東北大学・生命科学研究科 特任助教

植物の発生に興味があり、以前はイネの葉の形態形成を研究していました。博士修了後、細胞生物学の世界に飛び込み、現在はライブイメージングを駆使してシロイヌナズナ受精卵の体軸形成を研究しています

 

米倉 崇晃

東京大学・大学院理学系研究科 助教

植物の形づくりに魅せられて、どっぷり漬かっています. 少しでも新たな発見があるよう、コツコツ研究しています

 

*所属は2021年6月当時のものです

 

 

企画段階は新時代のグループワーク


 

池内「まずは自己紹介をお願いします。」

 

柏野「東京大学稲見研究室の助教の柏野です。」

 

樋渡「基生研の上田研で特任研究員をしている樋渡です。ゼニゴケの油体の形成メカニズムを研究しています。」

 

松本「東北大学植田研の特任助教の松本です。シロイヌナズナの受精卵の上下軸の決定機構を研究してます。」

 

米倉「東大杉山研助教の米倉と申します。数理モデルを用いた研究を専門としてまして、今は根の伸長に伴う運動の数理モデルの構築に取り組んでいます。」

 

池内「若手の会の幹事は、どのような経緯で皆さんがやることになったのでしょうか?」

 

樋渡「初めに僕と松本さんに若手の会の幹事やってみませんか、という話が来ました。でも実際始めていくのにあたって僕ら2人とも植物研究者ですし、情報系・数理系の人も必要だったので、そのあとで米倉君と柏野さんに加わってもらいました。」

 

池内「この4人で、あの企画をすべて用意したんですか!?(驚愕)」

 

松本「最初に好きなことを何でもやってもいいよと言われたのが、逆に難しかったですね。どんなことができるんだろうとか。どこまで企画したらいいのかとか、その企画を何個くらいしたらいいのか、どれぐらいの期間でやるのかとか。そういうところから考えていかなきゃいけなくて。自由度が高い分、考えることが多かったですね。」

 

池内「教授たちは関わらずに皆さんが企画したんですね。」

 

米倉「初めはもう全部そうでしたね。解析道場など、一部は先生方がかなり用意してくださったんですけど。」

 

池内「若手の会は2か月近くに渡ってありましたよね。全日程に参加するだけでも結構な時間ですね。企画は相当大変だったんじゃないでしょうか。いつ頃から準備していたのでしょうか?」

 

樋渡「7月の班会議の時からですね。日程もまったく決まっておらず、初めは途方にくれました。」

 

松本「プログラムもぎりぎりまで完成しなくて、どうなるかと思いました。柏野さんがツールを導入してくださってなんとかなりました。」

 

柏野「クラウドでのドキュメントの共有と編集ですね。その前はドキュメントをメールでやりとりしていたので。」

 

池内「みんながそれぞれ同時に作業した時に、最新版が統合できないと困るので、web上で共有していかないとできないですよね。」

 

柏野「来年はクラウドの講習会があってもいいかもしれないですね。Slackでも、@とかタグをつけないとどんどん消えていってしまうので。」

 

米倉「それからはZoomで話しながらGoogleの共有ファイルにアクセスしつつ、一つのファイルをみんなで同時に作るという様なことをして、何とか近場に居ないながらも作業していました。」

 

池内「まさに、新時代のグループワークですね!」

 

目玉企画となった共同研究コンペや道場


 

池内「大学院生やポスドクがグループになって共同研究を提案した、コンペ企画は面白かったですね!あのグループはどうやってできたんでしょうか。」

 

松本「参加者の学年や研究室、研究分野をざっと聞いて、バランスをとって私たちで決めました。」

 

池内「メンバーありきで、研究内容を考えたということですか?」

 

松本「私たちは班分けしか決めてないですね。研究内容は班ごとに考えてもらいました。」

 

柏野「情報系の参加者が少なかったので仕事が偏って大変だったみたいです。もちろんデータ提供は植物の方からしてもらってはいたんですが。」

 

樋渡「もともと、コンペ企画は参加者に仲良くなってもらうことが目的でした。今回はオンサイトの若手の会のように泊まらないから、同じ部屋になって仲良くなることができないじゃないですか。その代わりですね。」

 

池内「合宿形式でできないと、なかなか仲良くなるのが難しそうですね。実際にやってみてどうでしたか?」

 

米倉「分野の違う人と知りあえたのは非常に大きかったですね。特にコンペ企画で同じ班だった人とはかなり親睦を深められたと思います。」

 

池内「道場とかキャリア支援セミナーはどうでした?」

 

樋渡「柏野さんの人間拡張道場ではいろいろなセンサーやカメラなどデバイスを紹介してくれて、こんなのがあるのかということを知ることができたのでとても面白かったです。」

 

松本「キャリア支援セミナーも面白くてすごくいい機会でした。研究者がどういうキャリアを歩んできたっていうのをきちんとした形で聞く機会は貴重です。」

 

柏野さんの人間拡張道場のプレゼンテーション

 

異分野交流から学んだこと


 

柏野「情報側からすると、植物科学者がどんな研究をしてるのか想像つかなかったので、若手の会に参加して、それが分かったのは良かったですね。あぁこういう情報をこう使うんだなとか、こういう処理の仕方・見方が求められてるんだなとか。こういう技術が役立つだろうなということが分かったり、研究発表も勉強になって面白かったですね。」

 

池内「情報系と植物と、研究内容がまったく違いますが、分かり合えました?」

 

柏野「研究内容のかなり細かいところはなんのこっちゃ?となってしまうのですが、内容を上手く説明してくれる発表だと『おぉ~』みたいな感じで分かりましたね。でも分野外を意識してない発表は理解できなかったですね。」

 

樋渡「初めにやるべきは、研究発表会じゃなくてイントロ会だったんですね!」

 

松本「事前に、イントロをしっかりして下さいという周知をしっかりとしたほうがよかったかもしれません。」

 

池内「参加者の大半は植物科学者なので、普通の学会みたいな感じでいいかなと思ってる人も多かったかもしれませんね。専門家以外に伝わるように話すのは本当に難しいことなので、学生のころから他の分野の人に向けて発表したり、お互いに意思疎通をしようとする経験を積めたのなら本当に素晴らしいことですね。」

 

柏野「その練習として、本当に良い場でしたね。最初はプロジェクトの概要すら分かってないような状況でしたけども、参加できて良かったと思います、皆さんと知り合えましたし。」

 

池内「そういう経緯の柏野さんから見て、どういう所が面白かったですか?今まで植物の分子生物学とか発生生物学と触れる機会はほとんど無かったと思うんですけど、今回聞いた中でここは面白いなと思ったところはありましたか?」

 

柏野「自分の研究分野がマルチエージェントシステムという複数の小さいロボットが干渉し合って大きな物を構成する分野なんですけど、細胞の変化が植物全体に変化に繋がるところがシステムとして似ていて面白いと思いましたね。でもそのメカニズムを調べるのがどれだけ大変かよく分かりました。」

 

池内「コンセプト的なところで面白いと思ってもらったのですね。細胞が集まって組織、器官を作ってと段々大きなスケールになる所と通じ合うところがあるということですよね。」

 

インタビューの様子.和気あいあいと語り合う世話人たち.成功談、失敗談に会話が弾み、ついついここには掲載できないような話題も! 対面ならもっと盛り上がったかもしれませんね.

 

ウェブ会議運営の実際


 

池内「当日の運営はスムーズでしたか?」

 

松本「Zoomでの発表がなかなか難しくて、毎回ミュートの操作とか、録画の操作とか、あとタイマーですね。今回字幕でタイマーを表示したんですけど、字幕が映らないケースが結構ありました。」

 

池内「タイマーはどういう風になっていたんですか?」

 

松本「zoomのホスト権限を持ってる人が、字幕を表示できるので、担当の人が残り時間を字幕で打って知らせてました。」

 

米倉「この字幕を見えるようにするためには、ログイン毎に演者側も設定しないといけないので、大変な作業でしたね。」

 

松本「あと守秘義務を守ることをチャットで宣誓してもらうようにしてたんですけど、これがかなり面倒でしたね。」

 

池内「対面だったら来て受付で書いて一発で終わるけどそうはいかないですもんね。普通の合宿形式の若手の会に比べて断然大変そうですね…」

 

松本「最初、質疑応答をチャットでやってたんですけど、質問が入り乱れてしまって…。途中から挙手機能で質問してもらって、時間内にできなかった質問はSlackを使ってもらうようにしました。その辺は手探りで、実際やってみて分かったことですね。」

 

池内「なにかトラブルはありました?」

 

米倉「演者が来ないということが一度ありましたね。」

 

池内「Zoomミーティング、忘れそうになる時ありますよね…。出張なら絶対この日ここに行くって忘れることはないけど、Zoomミーティングはたくさん入ってくると何時にどこに繋ぐって結構すっぽかしやすい。」

 

松本「試写テストの時からいないぞってなって。時間になったけどいないぞって。」

 

池内「それはもう…無かったことに?」

 

米倉「順番を入れ替えてなんとか。」

 

池内「懇親会はどうしましたか?」

 

樋渡「懇親会というか、自由討論会ですね。」

 

米倉「SpatialChatというプラットホームを使ったんですけれども、質疑応答の続きみたいな感じでしたね。」

 

松本「私たちも実際には会ったことないんですよ。」

 

米倉「1度も対面したことないです。」

 

池内「私が学生だった頃に若手の会で知り合った友達が今でもずっと研究者仲間なのでここでの繋がりを大事にしてほしいですね。」

 

 

来年に向けて


 

池内「来年の幹事に向けて、何かアドバイスはありますか?企画する上でこうしたら良かったなということとか。」

 

松本「ちょっと企画が多すぎたかな。」

 

樋渡「幹事には各分野の顔の広い人を集めたほうがいいですね。」

 

松本「自由討論会を開きすぎたのも良くなかったかも。だんだん人が来なくなってしまうので。」

 

米倉「おそらく、対面と同程度に恥ずかしかったというか、行きにくいというのがあったみたいですね。SpatialChatでも話しかけにくい、というのはある。」

 

松本「誰かと誰かが喋ってると、割り込むのは微妙だなと。」

 

樋渡「気付いてほしい人の周りでぐるぐるしてる(笑)。知り合いにしかできないけど。」

 

池内「もともと知り合いじゃないとなかなか話せないですよね。オンラインだと新たに知り合いを作るのが難しいと感じます。」

 

米倉「強制的にマッチングしても良かったのかもしれないです。」

 

柏野「発表会の後でZoomのBreak Out Roomsにランダムに分けるとか。」

 

松本「それ、やれば良かったね!あと、今回の幹事の経験で事務的な仕事の仕方は勉強になりました。いかに効率的に作業して、自分の時間を確保するかという点では成長できたと思います。」

 

池内「効率的に仕事を捌く技を覚えておくと、将来役に立ちそうですね。今回はオンラインという制約の中でもうまく共同で作業して企画を工夫したり人間関係を築いたりと本当に素晴らしい活躍でしたね。ぜひ、皆さんご自身もこの新学術領域の機会を上手く使いながら、ご自身の研究を発展させて益々活躍していって下さい。どうもありがとうございました。」