研究成果Research Highlights

根の先端の細胞がスムーズに剥がれ落ちる仕組みを解明 -オートファジーが細胞を作り変えていた-

著者:Tatsuaki Goh、Kaoru Sakamoto、Pengfei Wang、Saki Kozono、Koki Ueno、Shunsuke Miyashima、Koichi Toyokura、Hidehiro Fukaki、Byung-Ho Kang、Keiji Nakajima

タイトル:Autophagy promotes organelle clearance and organized cell separation of living root cap cells in Arabidopsis thaliana

掲載誌:Development

掲載日: 2022 年 4 月 29 日 オンライン掲載:6 月 16 日発行

URL: https://doi.org/10.1242/dev.200593

 

中島班の中島 敬二 教授 (奈良先端科学技術大学院大学)、郷 達明 助教 (奈良先端科学技術大学院大学)、深城班の深城 英弘 教授 (神戸大学大学院理学研究科)らの研究グループは、植物の根の先端を覆う根冠(こんかん)の最外層の古い細胞が自ら剥がれ落ちて根の成長を促し、土壌の環境にも影響を与える仕組みについて、細胞の自己分解システム「オートファジー」が細胞の内部構造を作り変えることにより、剥離様式を精密に調節していることを明らかにしました。

今回、研究グループは独自に開発した特殊な顕微鏡技術を駆使し (動画1)、根冠細胞が剥離するまでの細胞の変化を詳細に観察したところ、剥離の直前にオートファジーのシステムが働き、細胞内の構造を劇的に作り変えることを突き止めました。さらに、このオートファジーによる細胞の作り変えが、根冠細胞の精密な剥離に重要な役割を担っていることを明らかにしました。根冠は成長する根の最前線にあり、根端を保護するほか、重力を感じたり、代謝物を分泌したりする細胞が機能ごとに順に層をなして積み重なり、また、最外層の剥離する細胞を通じて土壌の性質を作り変えるなどの重要な役割を担っています。根冠細胞の働きや剥離を制御する仕組みを解明した本研究成果は、植物の成長力向上や土壌環境の改善にもつながるものです。

 

動画1: 独自に開発した特殊な顕微鏡技術により根冠を追尾しながら細胞内の様子を観察した。

 

詳細は奈良先端科学技術大学院大学のプレスリリースをご覧ください

https://www.naist.jp/pressrelease/2022/06/009047.html