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細胞の職業選択を決めるスイッチの発見

著者:Takayuki Tamaki, Satoyo Oya, Makiko Naito, Yasuko Ozawa, Tomoyuki Furuya, Masato Saito, Mayuko Sato, Mayumi Wakazaki, Kiminori Toyooka, Hiroo Fukuda, Ykä Helariutta, Yuki Kondo

タイトル:VISUAL-CC system uncovers the role of GSK3 as an orchestrator of vascular cell type ratio in plants

掲載誌:Communications Biology

掲載日: 2020年4月22日

URL: https://www.nature.com/articles/s42003-020-0907-3

 

植物の維管束は、体中にはりめぐらされており栄養分やホルモンを全身に運ぶという重要なはたらきをもちます。維管束は水を運ぶ木部組織、そして糖を運ぶ篩部組織などさまざまな機能細胞から構成されています。篩部組織は主に、糖やホルモンの輸送を担う「篩管細胞」とそれらのサポートをおこなう「篩部伴細胞」の2種類の細胞から成り立っています。これら2つの細胞は共通する前駆細胞から分化し、ペアとして機能すると考えられてきましたが、どのようにして細胞の運命が決まるのか、またどのようにして細胞比率のバランスが決められているのかはこれまでわかっていませんでした。

 

近藤班代表の近藤侑貴准教授(神戸大学大学院理学研究科)らの研究グループは、維管束細胞分化誘導システム“VISUAL”を改良することにより篩部伴細胞の分化を誘導する培養方法を開発し、“VISUAL-CC”と名付けました。この方法を用いて大規模遺伝子発現解析をおこなった結果、篩部伴細胞の形成率は篩管細胞の形成率と強い負の相関を示し、そのバランスはタンパク質リン酸化酵素GSK3の活性に依存して変わることがわかりました。以上の結果から、GSK3が篩部伴細胞と篩管細胞の運命を切り替えるスイッチとして機能し、細胞タイプのバランスを保っていることが示されました。篩部伴細胞と篩管細胞はペアとして機能することから、GSK3による篩部組織での両者のバランスの調整は植物内の物質輸送を実現する上で重要な仕組みであると考えられます。篩部伴細胞は外環境と成長を結びつける統御系としても働くことから、本研究で得られた知見は植物の環境適応戦略の解明につながる技術基盤になると期待されます。

 

詳細は神戸大学のウェブページをご覧ください.

https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2020_04_22_01.html