研究成果Research Highlights

発見!根の先端は橋と同じだ! ―器官の形に生物種を超えた共通性をもたらす物理―

著者:#Motohiro Fujiwara, #*Tatsuaki Goh, #Satoru Tsugawa, Keiji Nakajima, Hidehiro Fukaki, and *Koichi Fujimoto (#同等な貢献, *責任著者)

タイトル:Tissue growth constrains root organ outlines into an isometrically scalable shape

雑誌名:Development (オンライン)

掲載日:2021年2月26日

URL:https://doi.org/10.1242/dev.196253

 

 

藤本班の藤本仰一准教授 (大阪大学)、中島班の郷達明助教(奈良先端科学技術大学)、中島敬二教授(奈良先端科学技術大学)、深城班の深城英弘教授(神戸大学)らの研究グループは、根の先端の輪郭が多くの生物種で共通して、橋などの建築物に広く見られるカテナリー曲線と一致することを明らかにしました。

 

カテナリー曲線

根の先端と橋と鎖の形の共通性 どの輪郭もカテナリー曲線(赤点線)に一致した。

 

動物の骨や植物の根など器官の輪郭の形は、種を超えて共通しているように見えます。この見かけの共通性を数学的に検証すること、また共通性を生み出す仕組みを生物学的に解明することは、生き物が進化を通じて環境にどう適応してきたかを知る手がかりになります。

 

今回、本研究グループは、根の先端の輪郭を定量的に解析する手法を考案しました。その結果、ネギ、キュウリ、スミレ、ナデシコ、コスモスなど多様な植物分類群に跨がる10種の根の輪郭が、いずれもカテナリー曲線に一致することを発見しました。また、遺伝子の変異を通じて、根の細胞分裂や伸長からカテナリー曲線を作りだす仕組みを明らかにし、計算機シミュレーションで実証しました。カテナリー曲線は力学的に安定な曲線で、建築物(図1)にも採用されています。今回の発見により根の先端も力学的に安定な形であることが示されました。この安定なカテナリー曲線が、根の効果的な成長にどのような役割を果たしているのか、今後の解明が期待されます。

 

 

神戸大学研究ニュース

https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2021_03_03_01.html