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水陸両生の水草ミズハコベが姿を変える仕組みを解明

著者:Hiroyuki Koga, Mikiko Kojima, Yumiko Takebayashi, Hitoshi Sakakibara, Hirokazu Tsukaya

タイトル:Identification of the unique molecular framework of heterophylly in the amphibious plant Callitriche palustris L.

掲載誌:The Plant Cell

掲載日: 2021年7月27日

URL: https://doi.org/10.1093/plcell/koab192

 

水辺に生育する植物である水草の仲間には、水中でも陸上でも育つことのできる水陸両生の種が知られています。水陸両生植物はしばしば、同一個体でも、陸上で成長している時と水中で成長している時とで劇的に異なる形態の葉を作る能力、異形葉性をもちます。塚谷班代表の塚谷裕一教授(東京大学大学院理学系研究科)らの研究グループは、オオバコ科アワゴケ属の水陸両生植物ミズハコベ(学名 Callitriche palustris)を用いて、異形葉性のしくみに迫りました。ミズハコベは陸上では卵形の陸上葉を、水中ではリボン状の水中葉をつけます。研究グループは、葉の形態形成の切り替えにはエチレンやジベレリン、アブシシン酸などの植物ホルモンが関わることを、まず示しました。さらに、複数の栽培条件での遺伝子発現パターンの網羅的な比較、および異形葉性をもたない近縁種との遺伝子発現パターンの比較によって、異形葉性に深く関わる遺伝子群を絞り込みました。今回の研究結果から浮かび上がったミズハコベの異形葉性の仕組みを、これまでに研究されてきた水草と比べてみると、関わっている植物ホルモンこそ共通していますが、その作用の仕方や、下流で働く遺伝子群は異なることが示唆されました。これは、水陸両生植物は系統によって独自のやり方で、水中の環境に適した葉を作る仕組みを実現したことを反映していると考えられます。

 

図:本研究であきらかになったミズハコベの異形葉性の制御機構

(A)陸上では拡散によるエチレンシグナルの減衰や、アブシシン酸(ABA)の増加、そしてその状況下でおこる遺伝子発現によって陸上葉が発生する。(B)水中ではエチレンの蓄積やABAの減少、さらに何らかの因子の影響によって遺伝子発現に変化が起こり、水中葉が発生すると考えられる。ジベレリン(GA)の内生量は変化しないが、その作用は水中葉の形成に必要である。

 

詳細は東京大学のHPをご覧ください。

URL: https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2021/7443/