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植物の葉器官のサイズ制御の長年の謎を証明 ~動植物の体のサイズを決める仕組みの理解、ひいては作物収量向上への貢献も~

著者:Hiromitsu Tabeta, Shunsuke Watanabe, Keita Fukuda, Shizuka Gunji, Mariko Asaoka, Masami Yokota Hirai, Mitsunori Seo, Hirokazu Tsukaya, Ali Ferjani

タイトル:An Auxin Signaling Network Translates Low-Sugar-State Input into Compensated Cell Enlargement in the fugu5 Cotyledon

掲載誌:PLOS genetics

掲載日: 2021年8月5日

URL: https://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371/journal.pgen.1009674

 

葉器官の大きさは厳密に制御されており、ある一定の大きさになるようにプログラムされています。葉面積を決める細胞増殖と細胞成長は、何らかの未知のシステムによって器官全体で統制されていますが、その仕組みは未だに解明されていません。今回、塚谷班代表の塚谷裕一教授 (東京大学大学院理学系研究科) らの共同研究グループは、細胞増殖と細胞成長の協調性を担う「補償作用」現象に着目し、葉面積制御システムの解明を目指しました。

本研究グループは独自に単離したシロイヌナズナのfugu5変異体を用いて、細胞数が減少した際に見られる顕著な細胞肥大である「補償的細胞肥」がどのように起こるのかを、分子遺伝学的解析を駆使して明らかにしました。その結果、fugu5で見られる補償的細胞肥大には、IBAから合成される植物ホルモンであるオーキシンが重要であり、そこでつくられたオーキシンの細胞内シグナル伝達によって、細胞サイズの著しい増大が引き起こされていることを新たに見出しました。この知見は、オーキシンの内生量の変動が葉面積の精妙な調節にも関与することを新たに示すとともに、オーキシンの濃度調節機構が植物の器官発生に重要であることを証明するものです。今回の発見は、植物の器官サイズ制御システムへの理解のみならず、植物の生産性を理解する上でも大変重要な一歩と言えます。

 

 

図: 補償作用の分子メカニズム。補償的細胞肥大はオーキシンと複数の細胞小器官が協同的な働きによって制御されている。

 

 

 

詳細は東京大学のHPをご覧ください。

URL: https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2021/7503/