研究成果Research Highlights

葉メリステムの謎:周縁分裂組織と板状分裂組織の関係をめぐる現時点の理解と、残された謎

著者: Hirokazu Tsukaya (塚谷 裕一)

タイトル:The leaf meristem enigma: The relationship between the plate meristem and the marginal meristem

掲載誌:Plant Cell

掲載日: 2021年7月21日

URL: https://doi.org/10.1093/plcell/koab190

 

葉を形作る細胞分裂活性は、葉原基を生み出すシュート頂分裂組織のそれよりもはるかに高いものがあります。これを担っているのが葉メリステムです。従来、葉メリステムはその細胞分裂活性の空間分布から、葉原基の基部全体に広がる板状分裂組織plate meristemと葉の辺縁部に局在する周縁分裂組織marginal meristemに分けて考えられてきました。後者については、古典形態学においてキメラ解析等からその実在が否定された歴史もありますが、近年の発生遺伝学的解析から、短命ながらも活動していることが示されています。また板状分裂組織と周縁分裂組織はそれぞれ、異なる転写因子や低分子RNAによって制御されていると理解されるようになってきました。しかしここには多くの謎が取り残されています。そもそも板状分裂組織と周縁分裂組織とが本当に異なるものかすら、わかっていません。それぞれの制御因子のmRNA発現部位を比較してみると、その発現パターンにはさほど大きな違いがありません。また周縁分裂組織を司るとされる遺伝子を異所的に強制発現させても、葉身の展開は促進されず、異常形態をもたらすことが知られています。同じ制御因子が、種によって葉原基の基部に発現したり、先端辺縁部に発現したりします。こうした板状分裂組織と周縁分裂組織をとりまく数多くの謎について整理し、考えうる解釈の可能性、また今後確かめないとならないポイントについてまとめ、perspectiveとしました。葉メリステムの研究の今後に役立つと期待しています。