領域代表からの
メッセージLeader's Message
本新学術領域では、植物が内包する周期性とその変調が、植物の形態や成長動態、あるいは生理機能に果たす役割に焦点をあて、これまで我が国が国際的な強みを発揮して来た植物発生学のさらなる深化を図ります。
植物発生学の研究は、20世紀終盤に確立したモデル植物の分子遺伝学とゲノム情報の整備、また、それに続く発生イメージングやオミクス技術の目ざましい進歩に支えられて発展してきました。本領域の中堅メンバーは、このような潮流の中で主要な発生原理の解明に携わって来た研究者たちであり、若手メンバーは新たな解析技術や実験系の開発を通じて独自の研究世界を切り拓いて来た研究者たちです。
光学技術や計算機技術の飛躍的な進化に伴い、植物発生学者は大量のデジタルデータを扱うようになりました。このような大規模データには、取得した研究者さえ気づかない価値が秘められています。植物発生学にとどまらず、生物学の研究を持続的に発展させるためには、大規模データを適確に取得し、それらを効果的に処理することで、未知の生命現象や新たな研究課題を見つけてゆくことが必要です。
本新学術領域では、植物発生学者、理論生物学、情報科学者の密接な連携を通じ、植物が周期構造を作る機構や、周期の変調が種に固有の形態や生存戦略を生み出す過程に迫ります。このような生物学の基盤を成す課題の解決を目指す中で、植物発生学の枠を越え、生物学一般に波及可能な融合研究の創造を目指します。特に情報学との連携では、人間の知覚行動に沿った情報提示技術やインターフェースの開発を推進することで、生物学者の発見を支援する技術を共同で開発します。
本新学術領域の推進には、設立メンバーである計画班・総括班の研究者に加え、目標の達成に向けて共に研究を推進して下さる公募班の研究者、様々な場面で助言をいただく評価委員の皆様、また文部科学省や日本学術振興会等の関係各位のご協力が欠かせません。本新学術領域の研究活動と運営に、一層のご支援を賜りますよう、領域設立メンバーを代表してお願い申し上げます。
奈良先端科学技術大学院大学・
先端科学技術研究科・教授